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【コラム】ばあちゃんと銀河水

僕が日々考えていること、昔の思い出などを綴ったコラムです。いつものブログとは少し違った雰囲気で、記事というよりは日記に近い読み物として楽しんでいただけたら幸いです。(ちょっと文章もトーン変えています)

僕が小学生だった頃の話。
学校が終わり、うちに帰ると玄関に何やら怪しげなダンボールが置いてあった。
中を覗くと、2リットル入りのペットボトルが6本セットで入っていて、見たところそれは水のようだった。

 

 

 

1. ばあちゃんが買った謎の水

ばあちゃんに聞くと、昼間に突然やってきたセールスマンから買ったと言う。

「これはすごい水なんじゃ!毎日飲めば健康になれるし、料理に入れたり、顔を洗ったりしてもいいんといや。高かったけど、買って良かったでぇ。」

ばあちゃんは水のことを熱く語りはじめた。

 

マズイ、これは非常にマズイぞ…。
小学生でも分かるくらい、どう考えても怪しかった。宇宙のようなデザインが施された青色のラベルに明朝体で「銀河水」と書かれたラベル。その謎めいたデザインが一層うさんくささを引き立たせていた。

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小学生ながらにヤバいムードを感じ取った僕は「何円で買ったの?」と聞いてみた。「1本1,200円もしたから間違いなく良いもんじゃ。」ばあちゃんは一点の曇りもない目でそう答えた。

僕は思った。「おーい、絶対騙されてるぞ!」

だいたい、蛇口をひねれば美味しい水が出てくる田舎において、わざわざ2リットル1,200円ものお金を払って買う必要などないのだ。

そこはかとなく漂う「田舎の年寄りが騙された感」を胸に秘めながら、僕は友達と遊びに出かけた。

ばあちゃんが不憫で、友達には水のことを話せなかった。

 

2. 家族会議

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その夜、家族会議が開かれた。
食卓のど真ん中に鎮座するペットボトルの水を取り囲み、怪訝そうに見つめる家族の様子は異様としか言いようがなかった。
銀河水のことをだれも知らなかったが、当時はスマホもインターネットもない時代だったので調べたくても方法がわからない。僕たち家族の中で銀河水は「どう見ても怪しい水」の域を脱せない。

「この水はすごいんじゃ!」
ばあちゃんは信じて疑わない。

「いや、どう見ても怪しいじゃろ!」
「だいたい1,200円は高すぎるわ。」
どこの馬の骨かも分からないペットボトルの水を、セールスマンの口車に乗せられて6本も買ってしまったばあちゃんは、家族全員から集中砲火を浴びた。
ばあちゃんは、ちょっと申し訳なさそうだった。

しかし、買ってしまったものは仕方ない。
もうこうなったら真実を確かめるのみ!われわれ家族の意思は固かった。
とりあえず、全員で水を飲んでみる。
さすがに高価なものを一気飲みするのは気がひけるので、少量が入ったグラスが各々の前に配られた。
満を持して、一口ずつ。

「グビッ!」
「……」
「あ、飲み…やすい?」
「うーん…」
「…」

全員、沈黙。

水の味など、正直よく分からない。
蛇口の水だって十分美味いのだから、大差ないと言えばそれまでだろう。
ただの水じゃねぇか!というツッコミをこらえて、家族会議は尻すぼみで終了を迎えた。

 

 

 

3. 銀河水の謎に迫る

あれから30年くらい経っただろうか。僕は銀河水の正体が知りたくなり、ネットで調べてみた。

実は驚くほど簡単に答えが出てきてしまったのだが、なんと銀河水は今でも普通に販売されていた。

銀河水について

この商品を販売しているのは「野口総合研究所」という宮崎県の会社だ。

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野口綜合研究所 公式Webサイト

人さまの健康づくりを真剣に考え、トレンドに流されない安心安全な商品・サービスを提供している立派な企業である。

銀河水は、そんな野口総合研究所によって開発されたミネラルウォーターで、宮崎県の霧島山麓で取水されている。
調べてみて驚いたのだが、日本で初めて「無殺菌で飲める湧水」として認められたのが銀河水の原水だったそうだ。
さらに質の高い水を求めた野口総合研究所は、ボーリングで地下200mまで掘り下げ、その結果「化石水」と呼ばれるミネラルの豊富な希少な水にたどり着き、それを銀河水として製品化したのだった。
小学生のころ散々怪しんだ銀河水は、企業の揺るぎない信念と大自然が生み出した、とんでもないミネラルウォーターだったのである。

 

4. せっかくなので買ってみた

ここまできたら、自分の身を以て確かめたい。
僕はすぐに銀河水を注文した。

Amazonとかでは売っていなかったので、こちらのサイトから購入させていただいた。
注文のシステムが複雑で、専用のフォームから申し込まなければならない。
この面倒くささがまた銀河水らしくて良い。

送料だけでも1,000円かかるので、この際まとめ買いでもしとくか…という訳のわからない理由で、まんまと「まとめ買いさせる作戦」にひっかかった。

メールで対応してくださったSさんが「3,000円以下の注文ですと別途手数料が330円かかってしまいますよ」と教えてくださったのでギリギリ3,000円を狙った。
この商売上手めっ! 

・銀河水2L…1,296円×2本
・銀河水500ml…410円×1本
・送料…1,000円

締めて4,002円。
高いわ、それにしても。

 

5. あんたの勝ちだぜ、ばぁちゃん

まだ商品は届いていないが、30年ぶりの銀河水にいまからワクワクしている。

注文から2日後に銀河水が届いた。

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早速、500mlの方を開封して飲んでみる。

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「ゴク…ゴク…」

「……」

「…うーん、わからん!」

 

ちょっと美味しい水っていう感想だった。
味の話でいうと「よくわからん」というのが正直なところだが、先ほどご紹介したとおり、ミネラル豊富でいろいろと効能はありそうだ。
料理に入れても、顔を洗ってもいいというもの本当で、Webサイトにもそう書かれていた。
2005年から2009年までの5年間はモンドセレクション金賞を連続受賞していた。

ばあちゃん、銀河水は正真正銘のすごい水だった。あんたの勝ちだぜ…。

 

そんなばあちゃんは一昨年、大動脈解離という病で突然この世を去った。
葬儀の朝。父と一緒に外へ出ると、地元を流れる大きな川にすごく綺麗な虹が2本かかっていた。

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あまりにも神々しくて不思議な景色だった。ばあちゃんが空へ歩いて行ったような気がした。

 

6. 時空を超えた銀河水

30年前、我が家を大混乱に陥れたばあちゃんと銀河水。
あのとき、ばあちゃんがすごい熱量でプレゼンした「この水はすごいんじゃ!」は30年の時を経て僕の心にぶっ刺さった。
そして「なんか昔ヤバイ水があったな」というおぼろげな記憶でしかなかった銀河水が、実は確かな実績を持つ優れた商品だったことも分かった。
ネットがここまで発達しなければ、僕は銀河水のことを一生誤解したままだったかもしれない。

時空を超えた「銀河水怪しい問題」は、テクノロジーの助けによりようやく僕の中で決着を迎えることになったのである。

 

ふとした瞬間に昔の記憶だったり思い出が蘇ることがある。だけど、だいたいがおぼろげだったり不確かだったり、解像度の低い情報ばかり。
そんなものを頼りに、この情報が溢れかえる社会を泳いでみると意外な発見があったりするもんだなと思った。
そして、実はこれってとってもロマンチックなんじゃないかな、なんてことを思ったのでした。(語彙力がヤバイですがw)
おしまい。

それでは、また。